ワセクロがこの2年で動かした5つの事態ーー今日は創刊2周年、一層のご支援をよろしくお願いします

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ワセダクロニクルは今日で創刊から2周年を迎えました。資金もなく志だけが頼りのスタートで、小舟で大海に漕ぎ出すようなものでした。ここまで活動できたのはワセクロを応援していただいたみなさまのおかげです。本当にありがとうございました。この間の歩みはこちらをご覧ください。

創刊特集の「買われた記事」に始まり、「強制不妊」「製薬マネーと医師」「石炭火力は止まらない」「検証東大病院  封印した死」の五つの特集を発信してきました。「製薬マネーと医師」では、私たちが記事を発信するだけではく、患者さんをはじめ社会全体で医師と製薬会社の関係をチェックできるよう「マネーデータベース『製薬会社と医師』」を公開しました。

政府や大企業といった大きな力の犠牲となっている人たち、または現状を放置すれば犠牲者になってしまう人たちがいます。ワセクロは、そうした人たちの声を伝えるだけではなく、犠牲を強いている側の不正を暴露して事態を動かします。それが探査ジャーナリズムの役割だと肝に命じています。

この役割を前に進めるために、私たちは国境を大きく超えました。非営利・独立のニュース組織が加盟する国際的なネットワークGIJNへの加盟です。GIJNには75カ国から173団体が加盟しています。このネットワークが、韓国の非営利・独立のニュース組織「ニュース打破」とインドネシアの有力誌「テンポ」との共同取材が実現する契機になりました。その成果が「石炭火力は止まらない」です。また、NGOとの連携も実現しました。マネーデータベース『製薬会社と医師』です。

今後も、海外のニュース組織とNGOとの連携を強力に進めていきます。

ワセクロは2017年2月1日、早稲田大学ジャーナリズム研究所のプロジェクトとして創刊しました。特定非営利活動法人の認証取得を機に、2018年2月1日からは早稲田大学から独立し、ジャーナリズムNGOとして活動しています。市民と共に歩むジャーナリズム組織を目指しており、一貫して寄付による運営をしています。早稲田大学のプロジェクトだった際も大学からの資金援助があったわけではありません。

この2年、市民のみなさまからの支えで活動ができました。海外出張を含め現場に徹した取材、膨大な公文書の取得、作業時間が3,000時間を超えた製薬マネーデータベースができたのは、ご厚意のおかげです。そして、私たちの活動に対して、二つの賞が授与されました。報道の自由推進賞「Supporter of the Free Press」部門(2017年)と貧困ジャーナリズム大賞(2018年)です。書籍の刊行を通じた活動の訴えも進めてきました。

ただ、ワセクロのメンバー20人はまだ全員無給です。脆弱な財政基盤と言わざるを得ません。市民と共に歩むジャーナリズム組織として、ワセクロが活動を継続していくために、私たちはより一層のご支援を必要としています。私たちは広告費に頼りません。持続可能な財政基盤の確立を抜きに、「プレスの自由」を守ることはできません。

以下は、ご支援いただいているみなさまへのワセクロの「約束」です。ご一読いただき、私たちと共に歩んでいただけるとこれほど嬉しいことはありません。

(1) 顔色をうかがわない
新聞社やテレビ局など会社組織は、組織を守るために官庁や大企業といった大きな力を持った取材相手や、広告を出してくれるスポンサーに遠慮することがあります。「ジャーナリストである前に組織人である」ことを求められます。ワセクロは、ゼロから出発したチャレンジャーです。取材対象には全力でぶつかっていきます。広告は取らないのでスポンサーを気にすることもありません。メンバーは、ジャーナリストとしての職業倫理を最優先に行動します。

(2) 旬のニュースを消費しません
ワセクロは、大きな力に虐げられている人のため事態を動かすことを目指しています。読者や視聴者の興味に合わせて、次へ移るということはしません。個人的なスキャンダルは、読者や視聴者の興味を集めたとしても取り上げません。取り上げるテーマは、犠牲者を救うために何を変えたらいいのかという視点で選びます。着手したら、事態が変わるまで粘り強く報道を続けます。

(3) 手間暇かけます
隠された事実を発掘するため、手間を惜しみません。「買われた記事」の初報は取材の本格着手から10ヶ月、「強制不妊」は8ヶ月かかっています。製薬マネーデータベースの作成には3,000時間超かかりました。官庁や企業が持っている情報のパイを奪い合い、「明日分かることを今日報道する」ような競争には、ワセクロは加わりません。圧倒的な取材量で官庁や企業を上回る情報を入手し、私たちが報道しなければ明るみに出ない事実を発掘します。

(4) 最高水準の技術で臨みます
私たちには警察のような捜査権があるわけではありません。新聞社やテレビ局のような資金力もありません。隠された事実を発掘するには技術が必要です。これまでの経験に決して安住せず、世界最高水準の取材技術を吸収し続けます。ワセクロが加盟するGIJNのメンバーは、互いの取材技術を常に学び合っています。世界大会は2年に1度開かれ、2017年11月は南アフリカに一堂が集いました。ワセクロからも8人が参加しました。2018年10月はソウルでアジア大会が開かれ、この時は10人が参加しました。ジャーナリストが殺害される国など様々な過酷な環境で仕事をする中で培った取材技術は、目を見張るものがありました。GIJNの仲間たちとの連帯を最大限に生かし技術を向上させます。

(5) お客様ではなく同志として
ワセクロの記事は、寄付金で支援していただいている方々以外もみることができます。新聞なら購読料を払う必要があります。その意味では不公平かもしれません。しかし、私たちはみなさまに「お客様」ではなく、「同志」として応援していただきたいと思っています。今の社会で何に立ち向かうべきか、みなさまと共に考え、みなさまに代わって全身全霊で取材と報道に専念します。

◉特集「製薬マネーと医師」
【概要】日本製薬工業協会(製薬協)に加盟する製薬会社71社が、2016年度に医師に支払った講師謝金やコンサルタント料などを集計したところ、総額が約266億円に上った。年間で「1,000万円以上」を受け取った医師が96人いた。その約8割が大学教授だった。「2,000万円以上」も6人いた。大学教授や学会幹部、病院長ら、医学界で影響力が強い医師たちに、多額の金銭が製薬会社から支払われていた。(初報) 2018年6月8日「製薬会社から医師への謝金など 年間1,000万円超が96人 2,000万円超えも/総額は266億円に 一部の医師に集中
【ワセクロが変えたもの】医師のNGO「医療ガバナンス研究所」と連携したプロジェクト。NGOと本格的に連携することで、成果に結びついた。製薬会社から医師に流れる金銭の流れを可視化させることにつながった。この結果、利益相反(COI)と医療現場の透明化を前進させた。この成果はジャーナリストの国際会議でも発表され、反響を得た。記事の発信だけに止まらず、「マネーデータベース『製薬会社と医師』」として公開された。誰でも無料で、自分が処方される薬が適切に処方されているかを確認できるようになった。

◉特集「検証東大病院 封印した死」
【概要】東京大学病院の循環器内科で、2018年10月、41歳の男性が亡くなった。「マイトラクリップ」と呼ばれる最新の心臓カテーテル治療を受けて、わずか16日後のことだった。拡張型心筋症という難病を患っていた男性は、心臓の状態が悪く、心エコー検査の数値も、マイトラクリップ治療を受けられる基準を著しく下回っていた。だが、担当医は男性の心臓の状態を「見た目」で判断し、治療に突き進んだ。治療は失敗に終わり、男性は容体が急変して死亡した。そして東大病院は、その死を「隠蔽」しようとした。継続取材中。(初報) 2018年11月26日「【速報】東大病院で心臓治療の患者が術後16日で死亡、院内からもミス指摘の声 / 医療事故調に届け出ず、『病死・自然死』で処理
【ワセクロが変えたもの】男性の不自然な死は、内部告発によって大手「マスコミ」も早くからキャッチしていた。だが、どこも報じようとはしなかった。「このままでは事件が隠蔽されてしまう」。ワセダクロニクルは動いた。2018年11月26日に速報を打ち、同月30日から連載を開始した。東大病院は焦り、放置していた医療事故・調査支援センター(医療事故調)への事故報告を12月に行った。このような病院の対応に不信感を抱いた東京都は、安全性が確認できるまでマイトラクリップ治療を中止するよう指導した。2019年1月24日には、様子見をしていた大手マスコミも事件を一斉に報じた。ワセダクロニクルには、この事件に関する内部告発や、関係者の証言が次々と寄せられている。専門知識で武装した医師たちを相手に一歩も引かず、事実を突きつけて問題をあぶり出していく姿勢が読者に高く評価されたのだ。男性を非業の死に至らしめた白い巨塔の闇に、今後も容赦なく斬り込んでいく。

◉特集「買われた記事」
【概要】2017年2月1日に公開した創刊特集。共同通信が配信した医薬品の記事が地方紙に載ると、電通のグループ会社から共同通信の子会社・株式会社共同通信社(KK共同)に「成功報酬」が渡っていた。カネの出どころは、その医薬品を販売する製薬会社。紙面には「PR」や「広告」の表記はない。記事は、カネを出した製薬会社の医薬品を巧妙な仕掛けで宣伝する内容だ。記事がカネで買われていたのではないか――。内部資料をもとに電通側の元担当者、記事を書いた共同通信の編集委員などを取材。製薬会社、電通、報道機関の間で動く、不透明で複雑なカネの流れを暴いていった。継続取材中。(初報) 2017年2月1日「電通グループからの『成功報酬』
【ワセクロが変えたもの】「買われた記事」のリリースと同時に始めたクラウドファンディング「『買われた記事〜電通が共同通信に成功報酬』を続報したい」には、550万円超の支援金が集まった。その資金をもとに取材を重ねた。初報から約2か月の2017年3月30日、電通・株主総会。株主から「ステマ広告のような手法は断固放棄すべきだ」と問われた高田佳夫・代表取締役専務執行役員は「電通の社内規定を見直す」と宣言した。共同通信でも動きがあった。2017年5月26日、河原仁志・総務局長が労働組合に対して「対価を伴う一般記事」の配信を今後は廃止する方針を示した。そして、行政が動いた。2017年11月に福岡市が、西日本新聞に調査に入り、口頭指導に踏み切ったのだ。福岡市は「記事なら記事、広告なら広告と明確に」と指導した。2018年4月、今度は東京都がMSDに対して医薬品等適正広告基準に基づく改善命令を出した。読者の支援がなければ私たちの取材は頓挫していた。(肩書きは当時)

◉特集「石炭火力は止まらない」
【概要】舞台はインドネシアの小さな漁村にできたチレボン石炭火力発電所だ。沿岸漁業、農業、塩田を使った塩の生産が、住民の暮らしの支えだった。石炭火力建設で住民の生活は大きく変わった。現地では健康被害や生活破壊を訴える声が上がっている。事業主体は、大手商社の丸紅が中心となって現地に作った会社だ。そこに、日韓の銀行団が巨額の融資をしていた。総額は約670億円。そのうち、日本政府が100%出資する国際協力銀行(JBIC)は約240億円融通している。問題の石炭火力には、公害を防ぐ高い技術が使われていなかった。なぜなのか。継続取材中。(初報) 2018年7月20日「公害経験国のもう1つの顔
【ワセクロが変えたもの】国境をまたぐ今回のケースで、ワセダクロニクルは韓国の非営利ニュース組織「ニュース打破」とインドネシアの有力誌「テンポ」と共同で取材を進めた。「ニュース打破」では2018年5月20日に報道した。その5ヶ月後、大きな動きは韓国から出た。韓国中部電力トップ、パク・ヒョング社長が韓国国会で、新たに建設予定の3号機の事業を「中断する」と表明した。事実上の事業撤退と言える。公害の原因となる有害物質を乗り除く最新の装置がチレボン石炭火力で使われていないことが問題になった。野党・民主平和党のチョ・ベスク委員が「目の前の利益だけを考えて投資するのが正しいでしょうか」と批判した。その時期、丸紅も新たな石炭火力発電所は原則つくらないという内容だ。だが、丸紅は、チレボン石炭火力からの事業の継続は進める意思をワセダクロニクルの取材に対して示している。なぜ、日韓はそれが使われないのだろうかーー。ワセダクロニクルは石炭火力をめぐる日韓、インドネシアの3政府の思惑を、さらに新しい事実を公衆に向かって暴露していく。「ニュース打破」「テンポ」と連携しながら。

◉特集「強制不妊」
【概要】1948年に制定された旧優生保護法のもと、強制的に不妊手術を受けさせられた人は1万6500人以上にものぼる。精神障害や知的障害、身体障害をもつ人に対し、「不良な子孫の出生を防止する」(同法第1条)として、国が旗振り役となって強制不妊手術を受けさせた犠牲者だ。本人の同意がないばかりか、だまされて無理やり手術を受けさせられたりするケースまであった。ワセダクロニクルでは、国策によって各都道府県が手術件数を競い合った経緯や、被害者の半生を通じて強制不妊手術の実態に迫った。(初報) 2018年2月13日「厚生省の要請で自治体が件数競い合い、最多の北海道は『千人突破記念誌』発行
【ワセクロが変えたもの】ワセダクロニクルが47都道府県への情報公開請求を開始したのは2017年8月。各地の公文書館や国会図書館などから集めた資料を分析。厚生省(現在の厚生労働省)が各都道府県に要請して手術件数を競い合った経緯や、家族・親族の病歴や犯歴の調査を命じていたりした事実を明らかにすると、全国紙、通信社、テレビ局が後追い報道した。2018年1月に手術を強いられた女性が国を提訴したことで新聞、テレビなどが一斉に報道を始めていたが、ワセダクロニクルは被害実態の全貌や構図に迫る報道にこだわった。また、宮城県内の女性の被害実態を通じ、強制不妊手術の推進に行政だけではなく、NHKなどマスコミが関与していたことも暴露。こうした報道を受け、北海道などで公文書の公開に踏み切る自治体が相次いだほか、新たな提訴に踏み切る被害者も増えていった。強制不妊をめぐる問題は国会でもとりあげられようになり、2018年3月には政府与党によるワーキングチームと超党派の国会議員連盟も発足。被害実態の調査に加え、救済策をめぐる議論が本格化した。被害者への謝罪や、救済一時金を支給することなどを盛り込んだ救済法案が早ければ今国会にも提出される見込みだ。


 

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