【CEO便り】ワセクロを作るのは市民だーー韓国にできて日本にできないはずがない

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ワセダクロニクルCEO 荒金教介

 

ワセクロは「世界プレスの自由デー」の5月3日、韓国のドキュメンタリー映画『共犯者たち』の上映会とシンポジウムを開きました。300人分のチケットがあっという間に売れ、2階席にまで人が入りました。誠にありがとうございます。

社長車の前に立ちはだかった記者「市民の支持を信じた」

『共犯者たち』では、KBSやMBCなど大統領に弾圧された放送局の記者たちがストライキを通じて闘う姿が描かれていました。保身に走る経営陣は大統領のいいなり。現場の記者たちが、社長の車の前に立ちはだかる場面もありました。

KBSの李鎭成(イ・ジンソン)さんは、社長の車の前に立ちはだかった1人。上映後のシンポに参加していただきました。李さんはお会いすると、にこやかな笑顔を絶やさない穏やか方です。この人のどこに、激しい闘いに向かうエネルギーがあるのかと不思議に思っていたら、シンポでこう語りました。

「市民が我々ジャーナリストを支持してくれると信じていました」

シンポには、成均館大学新聞放送学科研究教授の鄭寿泳(チョン・スヨン)さんにも駆けつけていただきました。

鄭さんは、「民主市民言論連合」の政策委員でもあります。この団体は市民が会費を出し合って、メディアが権力を監視する役割を果たしているか、チェックする活動をしています。市民がジャーナリストたちを支えることが、民主主義を守る上で大切だと話してくれました。

「韓国のジャーナリストが強くて、日本のジャーナリストが弱いということではありません。韓国のジャーナリストは市民の支えがあるのです」

確かに韓国は市民がジャーナリズムを支えているんです。

例えば、ニュース打破。『共犯者』の中に出てくる放送局の記者が退社して立ち上げた非営利のニュース組織です。いつでも解散する覚悟で始めたものの、今や4万人の市民が、1ヶ月1000円の会費で支えています。

韓国で刺激を受けてきた編集長

では「市民がジャーナリズムを支える」ことは、韓国の話であって日本では無理なのでしょうか。僕は李さん鄭さんの話を聴きながら、自分自身がワセクロのCEOとして活動するまでのことを重ね合わせていました。

僕はジャーナリズムを勉強したわけでも、記者の経験があるわけではありません。普段は銀座でバーを経営しています。バーカウンターの中に立ち、お客様と接しています。

ワセクロ編集長の渡辺周は、お店を2011年にオープンして間もない頃からの常連さんでした。渡辺はまだ朝日新聞に勤めていました。

それが2015年の秋頃、「朝日を辞める」といいます。今思えば、渡辺は2015年の夏にニュース打破に視察に行っています。市民に支えられて闘っているニュース打破のみなさんに刺激を受けて帰ってきたのでしょう。朝日新聞という会社が嫌になったというよりは、新しい挑戦にワクワクしている様子でした。

程なく、渡辺から「銀座でお店を続けている手腕で助けてほしい」と頼まれました。しかも開き直ります。

「これまでは経費と給料が出て当たり前と思っていた。でもこれからはそうはいかない。しかも俺は記者しかできない。お金を工面する能力はない」。

ほっとけませんでした。

犠牲者を見て見ぬふりできない

渡辺の頼みを引き受けたものの、ワセクロでの仕事は増える一方です。お店を休むことも多くなりました。お客様に「きょうすけは何をしているの?」「お店休んでまで」といわれます。お店のスタッフにも負担を掛けてしまっています。自分でも「寝る時間削り、昼間動き、夜お店の日々とは何のためだろう」と思います。

でも、ほっとけないのです。

最初は、朝日新聞を辞めてワセクロを立ち上げ、人手が足りない渡辺をほっとけませんでした。

創刊から2年経った今は違います。大きな力の犠牲になっている人たちをほっとけません。見て見ぬふりはできません。

国家による強制不妊で子どもを産めない身体にさせられた人たち、医療事故で亡くなった人、日韓の大企業による石炭火力発電所の建設で公害に怯える村人たち、、、。そのほかにもワセクロは、犠牲者を救うために様々なテーマで取材に駆け回っています。ワセクロに参画しなければ知ることのなかった現実です。知ってしまった以上、見て見ぬふりはできません。

驚きの手間暇

僕がワセクロに入って驚いたことがあります。取材にかける手間暇です。

シリーズ「強制不妊」は初報を出すまで8カ月以上かかっています。47都道府県や厚生労働省などに情報公開請求をしました。交渉を重ねて資料を入手し、隠された事実を掘り起こしました。ほかにも「製薬マネーデータベース」は作成に3000時間、創刊特集の「買われた記事」は10ヶ月といった具合です。取材中のテーマの中には、すでに3年かけているものもザラです。

それでも、ワセクロは犠牲者のためにきっちり結果を出します。強制不妊では、ワセクロの記事が突破口になって被害者に補償金を出す法律ができました。安倍首相は「多くの方々が、心身に多大な苦痛を受けてこられました。政府としても、真摯に反省し、心から深くお詫び申し上げます」と謝罪しました。

「ワセクロは犠牲者のために闘う」。活動の原点を、僕はワセクロの記事で世の中が動くたびに確認しています。

あなたの1000円が国を動かし犠牲者を救う

以上が、ジャーナリストではない僕がワセクロで活動するようになった経緯です。ぜひみなさんも「犠牲者の救済」という目的のもと、ワセクロに参加してください。

例えば強制不妊の取材でかかった費用は、情報公開請求や旅費などで120万円です。毎月1000円、100人の方が1年支援していただければ賄えます。

あなたの1000円で、犠牲者のために国を動かせるのです。

シンポの来場者のアンケートの中に「犠牲者と被害者の救済という信念を心から支持しています」という言葉を見つけました。自分たちを支持してくれている人の存在を強く感じます。

「市民が支えるジャーナリズム」は韓国だけのものでありません。決意を新たに、私たちは闘います。

これからもワセクロを宜しくお願い致します。

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