【受賞報告】ワセダクロニクルの特集「強制不妊」が貧困ジャーナリズム大賞を受賞、「一連の報道に先鞭」と評価

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授賞式後のシンポジウムで話をするワセダクロニクルの渡辺周編集長(中央)=2018年9月18日、東京都文京区春日1丁目(C)Waseda Chronicle

ワセダクロニクルにご寄付をいただいている皆さん。

うれしいニュースをお知らせいたします。

特集「強制不妊」の探査報道に対して「貧困ジャーナリズム大賞」が18日、贈られました。貧困のない社会をめざすNGO反貧困ネットワークが同日発表しました。「マスコミ」を含めた強制不妊手術をめぐる一連の報道の中で「先鞭をつけた」と評価されました。貧困ジャーナリズム大賞は貧困問題に関する顕著なジャーナリズム活動を顕彰するもので、2007年から始まりました。大変励みになる賞をいただきました。

みなさんのご寄付によって取材が続けられたことが今回の受賞につながりました。

この賞をご寄付をいただいた皆さんと分かち合いたいと思います。受賞対象は「『強制不妊』取材班」となっています。私たちは、この「取材班」にご寄付をいただいた皆さんも含まれていると考えています。

本当にありがとうございました。

ワセダクロニクルは強制不妊手術に関する報道を2018年2月13日から開始しました。

厚生省(現在の厚生労働省)の要請で自治体が手術件数を競い合っていたり(*1)、家族・親族の病歴や犯歴の調査を命じていたりした事実を暴いてきました(*2)。北海道が手術件数の『千人突破記念誌』を発行していたこともワセダクロニクルの報道で明らかになりました(*3)。また、強制不妊手術の被害者の女性の半生を通じて、行政ぐるみで強制不妊手術の推進を進めた実態を明らかにする一方、その推進組織に当時のNHK経営委員や宮城県の有力紙・河北新報社会長が関与していた実態も明らかにしてきました(*4)。ワセダクロニクルの報道を受け、「マスコミ」の報道も相次ぎ(*5)、国が被害者への補償に向けた検討を開始するきっかけをつくりました。

報道は現在も継続中です。ワセダクロニクルは世界探査ジャーナリズムネットワーク(GIJN)オフィシャルメンバーです。GIJNが主催するアジア大会(IJAsia2018)が10月に韓国ソウルで開催されますが、ワセダクロニクルはこの大会で強制不妊手術に関する一連の探査報道を紹介する予定です。

18日に東京都文京区の文京シビックセンターであった授賞式で、ワセダクロニクルの渡辺周編集長は「力ある者が、弱い者を虐げる構図は今も変わらないのではないか。ジャーナリストがどちらの側に立たねばならないかが問われる取材だった」と挨拶しました。賞状とお花をいただきました。

ワセダクロニクル一同、皆さんに心から感謝するとともに、引き続きの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

「人権侵害や当事者の無念を暴き出した」「NPOによる報道、社会的認知の高まりを」

受賞理由は以下の通りですーー。

ワセダクロニクル渡辺周編集長ら「強制不妊」取材班 ワセダクロニクル「精神病患者や障害者等への強制不妊手術」についてのキャンペーン報道

旧優生保護法によって精神や身体に病気や障害を持った人たちなどが戦後の長い間、強制的に不妊手術を受けさせられていた実態。1948年制定の優生保護法によって国策として各地で行われ、1996年まで法律上は実施可能だった。

最近になって当事者が声を上げて裁判に訴えるケースも出始め、新聞やテレビなどでもたびたび報道されるようになった。一連の報道の中で18年2月に先鞭をつけたのが、インターネットで発信するワセダクロニクルだ。日本で最初の本格的な調査報道NPOである同団体は、「探査ジャーナリズム」をうたい、広告収入や購読料に頼ることなく、読者の寄付だけで運営されている。

ワセダクロニクルは2017年から情報公開請求などで集めた文書資料を元に探査を進め、18年8月末までに26回にわたって強制不妊に関する記事を公開した。相模原市での障害者殺傷事件で逮捕された被告が示した優生思想は関係者に大きな衝撃を与えたが、実は「強制不妊」をめぐっては国家や地方自治体、医師やマスコミなどが率先して優生思想を元に「不良な子孫の出生を防止する」ことに邁進する実態があったことを一連の記事は露見させた。なかには精神疾患も障害もないのに、貧困ゆえに勉強が遅れていた少女が不妊手術を強いられていたケースを発掘した記事まである。「忌まわしい過去」を直視しない社会のありようが再び同じ過ちを繰り返してしまう教訓も伝えている。

強制不妊に伴って数々の人権侵害や当事者の無念を歴史に遡って暴き出した報道の価値は、ジャーナリズムの歴史の中でも傑出している。「強制不妊」のキャンペーンは現在も継続中だ。調査報道NPOは米国ではピューリッツァー賞を受賞するなどメジャーな存在になっているのに比べると、日本ではまだ多くの人が知る存在とはいえない実態がある。その社会的な認知が高まることを願い、ここに大賞を贈る。

【脚注】

*1 ワセダクロニクル「【強制不妊】厚生省の要請で自治体が件数競い合い、最多の北海道は『千人突破記念誌』発行」2018年2月13日。

*2 ワセダクロニクル「【強制不妊】厚生省令で、家族・親族の病歴や犯歴調査を命令」2018年2月15日。

*3 ワセダクロニクル「【強制不妊】厚生省の要請で自治体が件数競い合い、最多の北海道は『千人突破記念誌』発行」2018年2月13日。

*4 ワセダクロニクル「オール宮城で「優生手術の徹底」、NHK・河北新報の幹部も顧問に【連載レポート】強制不妊(5) 」2018年3月2日、「NHK経営委員と『優生手術の徹底』【連載レポート】強制不妊(6)」2018年3月7日、「マスコミは『味方』だったのか【連載レポート】強制不妊(10)」2018年3月22日、「新聞記事で『精薄児を徹底的に絶やす』【連載レポート】強制不妊(11)」2018年3月23日など。

*5 UHB(北海道文化放送) 「最多の北海道 手術1000件突破”記念誌”見つかる 旧優生保護法『関係者の協力で』」2018年2月14日、毎日新聞「『千件突破』冊子で功績強調 最多の北海道」 2018月2月16日、共同通信「不妊手術千件で記念冊子発行 旧優生保護法下で北海道」 2018年2月16日、毎日新聞「旧厚生省が『優生手術』増を要請」 2018年2月20日など。

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