薬の値段の「算定組織」委員長ら3人が製薬会社から1,000万円超の副収入 / 厚労大臣、委員と製薬会社との利害関係は「不開示」: 【特集】製薬マネーと医師(2)

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薬の値段(*1)を決める中央社会保険医療協議会(中医協)(*2)の「薬価算定組織」の委員11人のうち、2016年度に製薬会社から講師謝金やコンサルタント料などを得ていた9人の平均受領額が502万円だった。委員長の秋下雅弘・東京大学教授(老年病科)ら3人の委員が受け取った金額は、それぞれ1,000万円を超えていた。

薬の値段は、製薬会社の売り上げを左右する。その決定に影響力を持つ委員たちが、製薬会社から多額の副収入を得ていた。 受け取った金額によっては、委員は審議そのものにも参加できない。ところが厚生労働省は、各委員がどの製薬会社からいくら金銭を受け取っているのかを示す文書を公開していない。製薬会社と医師の利害関係を透明化するために欠かせないものだ。

(「シリーズ『製薬マネーと医師』を始めます」もお読みください)

受領委員の平均は502万円 / 歯科の専門家2人は受領なし

薬価算定組織の委員名簿は、厚労省のホームページ上では公開されていない。このため、ワセダクロニクルは情報開示請求を厚労省にかけ、委員名簿を入手した。薬価算定組織の委員は、本委員の11人と、医学や薬学など分野別専門委員の42人で構成される。

今回ワセダクロニクルは、本委員11人が2016年度に製薬会社から受領した講師謝金やコンサルタント料などを調べた。もとになったのは、ワセダクロニクルと特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所が作成したデータベースだ。

薬価算定組織では、委員に対して規制がある。過去3年度のうち、審議に関係する製薬会社から50万円を超える金銭を受け取った年度があれば議決に参加できないほか、500万円超なら審議にも参加できない。

製薬会社から受け取った金額が最も多かったのは、倉林正彦・群馬大教授(循環器内科)の1171万円。次いで、委員長の秋下・東大教授の1157万円、弦間昭彦・日本医科大学学長(呼吸器内科)の1043万円。平均は502万円だった。

歯科の専門家2人は受領していなかった。

以下の表になる。

製薬会社が「列をなす審議会」

薬価算定組織とはどんな組織なのだろうか。

医師が処方する医療用医薬品については、新しい医薬品の製造販売が許可された後、中医協が価格を決める。

この中医協の下部組織に薬価算定組織がある。ここで具体的な価格の算定作業を行っている。年に4回程度、算定組織の委員長が中医協の総会に報告、承認を得るという手続きを踏む(*3)。算定組織が薬の値付けに大きな影響力を持っている。

中医協が開催されると、会場の受付には製薬会社の関係者が列をなしている。ワセダクロニクルでは実際に確認している。『行列のできる審議会~中医協の真実』(*4)という本まで出版されているほどだ。

製薬会社の関心が高いのは、薬価が企業の業績を大きく左右するためだ。

例えば、2014年8月に中医協で保険の適用が決まったがん治療薬オプジーボ。算定組織は100mgの1瓶あたり約73万円の値を付けた。画期的な薬と判断されたからだ(*5)。

「オプジーボ効果」で、販売元の小野薬品工業は2017年3月期決算で売上が前年比53%増の2448億円に上った。最終利益は2倍増の558億円。いずれも過去最高だった(*6)。

厚労大臣、委員の利害関係を「不開示」 / 「個人の権利権益を害するおそれ」

厚労省は、薬価算定組織の委員が製薬会社から多額の副収入を得ていることを把握しているのだろうか。 

ワセダクロニクルは、厚労省に対して、薬価算定組織の委員が製薬会社から得た金銭について情報開示請求をした。

加藤勝信・厚労大臣が出した決定は「不開示」。理由は以下のようなものだった。

●公開することで、個人の権利権益を害するおそれがある

●人の生命や健康を保護するために公開することが必要な情報ではない

ところが、厚労省は、新薬の審査や薬の副作用の調査などをする別の薬事・食品衛生審議会では、その委員が審議に関係する製薬会社から受け取った金額について、委員の申告書をホームページに掲載している。

その審議会では、製薬会社と委員との金銭が絡む関係が適切かどうか、私たちもチェックすることができる。

薬価算定組織は違う。

委員の申告書が公開されていないので、製薬会社と委員との関係について、外部から確認しようがない。情報開示請求をしても「不開示」の決定になった。

製薬会社から得た金額により委員を退席させるなど、利害関係に関する規制通りに審議を運営しているのだろうか。ワセダクロニクルは、薬価算定組織の秋下委員長に話を聞いた。

薬価算定組織の名簿

=つづく

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*1 薬の値段 保険医療に使用できる医薬品の品目とその価格は厚生労働大臣が定めることになっている。製薬会社が自由にその価格を決められないということだ。出典:髙橋未明「日本の薬価制度について」2016年、厚労省ウェブページ(2018年6月11日取得、http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11123000-Iyakushokuhinkyoku-Shinsakanrika/0000135596.pdf)。

*2 中央社会保険医療協議会(中医協)   厚労大臣の諮問機関。医療行為の対価として医療機関や薬局が受け取る「診療報酬」や「薬価」を決めている。42兆円の医療費を差配する大きな権限を持っている。健康保険組合など支払い側7人、日本医師会など診療側7人、公益代表6人の計20人で構成。社会保険医療協議会法などに基づく組織で、委員の人事は国会の同意が必要。2004年、日本歯科医師連盟(日歯連)幹部が中医協支払い側委員に、歯科医の診療報酬引き上げに賛成するよう依頼し賄賂を贈った贈収賄事件が起こり、日歯連幹部5人と支払い側委員の元社会保険庁長官や元連合副会長が逮捕・起訴された。出典:厚労省「中医協を巡る贈収賄事件(概要)」2005年、厚労省ウェブサイト(2018年6月13日取得、http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/dl/s0222-14g.pdf)。

*3 厚生労働省「現行の薬価基準制度について」2016年、厚労省ウェブページ(2018年6月13日取得、http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000144409.pdf)。

*4 新井裕充『行列のできる審議会〜中医協の真実 』2010年、ロハスメディア。他にも、医療ジャーナリストの牧潤二は「私など『フリー』の者、記者クラブ非加盟社の人たちは、早朝から順番取り(席取り)のために並ぶことになります。実際、そこに並んでいる人たちの半分以上は製薬会社の人たちでしょう。特に、中医協の総会と併せて薬価専門部会が開かれる日は、製薬会社の人たちが目立ちます」と記述している。出典:牧潤二「取材風景/中医協を巡る取材合戦」、牧事務所ウェブページ(2018年6月14日取得、http://maki.press/report.html)。

*5 薬価算定組織は2014年8月27日の中医協総会で、オプジーボの価格設定について「本剤と同一の効能・効果を有する既収載品はなく」「世界に先駆けて我が国で初めて薬事承認を取得した」などと説明した資料を提出し、中医協の承認を得た。その後、英国の約5倍、米国の約2.5倍という価格に批判が高まり、2017年2月に100mg1瓶約36.5万円へと半額に引き下げられた。出典:厚労省ウェブサイト(2018年6月13日取得、http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000055583.pdf)。

*6 小野薬品工業「平成29年3月期決算概要」、同社ウェブページ(2018年6月13日取得、https://www.ono.co.jp/jpnw/ir/pdf/k_setsumei/170512_1.pdf)。

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